東京高等裁判所 昭和26年(う)3387号 判決
原審第一回公判廷で弁護人が「本件の証拠として検察官から取調方請求のあつた収税官吏大蔵事務官竹本裕一作成に係る差押顛末書については之を証拠とするに異議がある」旨を申述した際、原審裁判官が直ちに該書面の作成情況等を調査したか否かについて該公判調書に格別の記載の存しないことは所論の通り記録上洵に明かであるが、該公判調書に右記載が存しないからと云つて直ちに該調査が為されなかつたものとは到底即断し得ない。寧ろ、却て弁護人の申述に次ぎ「原審裁判官は「弁護人の不同意に拘らず右書面を刑事訴訟法第三百二十三条第三号の書面として本件の証拠とする」旨を宣し、引続き其の証拠調手続が履践された」旨同公判調書に記載されて居ることからすれば、原審裁判官は弁護人の右申述後該書面が右法条に該当するや否を調査の上之を右の如く判定して所定の証拠調手続履践に至つたものであつて、当時所論の調査の為されたことを窺知するに難くないのみならず、本件記録殊に前記差押顛末書並に原審第二回公判調書等に拠れば該書面は前記収税官吏が被告人に対する酒税法犯則事件調査のため、国税犯則取締法に基いて裁判官の令状を得た上被告人立会の下に被告人方で、同法第十条によつて為した差押顛末を記載したものであり、原審が其の第二回公判廷で右作成者を証人として取り調べた結果に徴しても右が信用すべからざる情況の下に於て為されたことを窺わしめる事跡の毫も顕われて居ないものであるから、原審が該書面を刑事訴訟法第三百二十三条第三号に該当するものとし、弁護人の不同意に拘らず之に証拠能力を認めて本件罪証とするに至つたのは適法であつて、原審の訴訟手続には何等所論の如き違法ありと謂うを得ない。
論旨は理由がない。